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映画『万引き家族』


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万引き家族』|

 

  つながりって、血だけじゃないんだなあって思った話
 「家族って、血がつながってなくても、なれるのかもしれない」

 

 そんなことを、映画万引き家族を見終わったあとに考えていました。
この作品は、普通の家族のように見えて、実は血のつながっていない人たちが一緒に暮らしているお話。でも、そこにある絆やぬくもりは、むしろ“本物の家族”よりも強く感じることもあって。

 

 正直、観ている間ずっと心がぎゅっとなったり、あったかくなったり、ザラザラしたり。いろんな感情がまざってくる、不思議な作品でした。


 ■ 古い一軒家での、ちょっと不思議な家族
 話の舞台は、東京の下町にある古くて狭い家。そこに暮らしているのは、日雇いの仕事をしているお父さん・治(リリー・フランキー、クリーニング工場で働くお母さん・信代(安藤サクラその子どもの翔太そしておばあちゃん、さらに若い女性と…いろんな人が一緒に住んでる。

 

 ある日、帰り道で治と翔太は、寒さに震えている女の子・ゆりを見つける。どうやら家ではうまくいっていない様子で、痣もあったりして…。ふたりは、あまり深く考えず「寒いし、ちょっとだけ家においで」って連れて帰っちゃいます。

 

 そして気づけば、ゆりも“家族”の一員になっている。名前を変えて、髪を切って、みんなと一緒にごはんを食べて、お風呂に入って、遊んで。…でも、もちろんそれは法律的にはアウト。誘拐ともとられかねない行為。でもね、画面の中の彼らを見ていると、それが「優しさ」だったように思えてしまうんです。


 ■ 万引きして暮らす日々、それでも笑顔は本物だった
 この家族、実はお金に困っていて、“万引き”で生活を支えてる。
もちろん、それは悪いこと。正当化なんてできない。
だけど、治と翔太が息を合わせて商品をカバンにしまい、帰り道で「うまくいったね!」って笑いあう姿には、どこか楽しそうな親子の風景があって。…悲しいんだけど、あたたかいんですよね。

 

 ごはんのシーンもすごく印象的。コロッケを分け合ったり、鍋を囲んで笑ったり、ささいなことでじゃれ合ったり…。決して裕福じゃない。でも、そこにあるのは“幸せな時間”そのものでした。

 

 安藤サクラさん演じる信代の母性もすごくリアル。ゆりに服を着せてあげたり、髪をとかしてあげたりするシーンが、まるで本当の母親のようで。

 

 「子どもは、生んだだけじゃダメなんだよ」ってセリフがあるんですが、グッときました。血のつながりより、ちゃんと「向き合って育てる」ことのほうが大事なんだって伝わってきました。


 ■ 血よりも濃い、でも壊れやすい絆
 映画が進むにつれて、この家族の「秘密」が少しずつ明かされていきます。
実は、誰と誰も血がつながっていない。みんな、どこかの段階で“見捨てられた”り、“行き場がなくなった”人たち。

 

 でも、そんな人たちが出会って、助け合って、一緒に暮らして…。それはもう、十分に「家族」だったと思う。血のつながりはなくても、ちゃんと愛があったし、思いやりもあった。

 

 だけど現実は、そんな絆を簡単に壊してしまう。
ある日を境に、バラバラにされてしまう彼ら。そのときのシーンはほんとうに胸が痛くて、言葉が出なかった。とくに翔太が、別れ際にぽつりとつぶやく一言。

 

 「僕、この人たちと一緒にいたかった」
たったそれだけ。でも、泣きました。
子どもが選んだ“家族”。それを社会が認めてくれない理不尽さが、すごく苦しくて。でも、それが今の現実なんだとも思わされました。


 ■ 「家族」って、なんなんだろう?
 この映画を観て一番感じたのは、「家族って血だけじゃないんだな」ということ。
たとえば、法律上はちゃんと親子でも、愛がない家庭もある。逆に、血がつながってなくても、本当の親子みたいに暮らしてる人たちもいる。

 

 そう考えると、家族って「選んで作るもの」でもあるのかもしれない。
一緒に過ごして、笑って、泣いて、思い出を重ねていく中で、ゆっくりと形になっていく。

 この映画は、そんな“新しい家族のかたち”を、そっと教えてくれた気がします。

 

 話の最後に、「子供たちはあなたのことをなんて呼んでいましたか?お母さんって呼んでいましたか?」という調査員の言葉が深く心に刺さりました。子供たちに名前で呼ばれていた信代にとってこれほど残酷な質問があるだろうか。うつむいて静かに泣く信代の姿に心が張り裂けそうだった。

 

 


 ■ 最後に
 『万引き家族は、観る人によって感じ方がぜんぜん違う作品だと思います。
ただの「貧しい家族の話」ととらえる人もいれば、「社会の闇を描いた映画」ととらえる人もいると思う。

 「人はひとりでは生きていけない。誰かとつながっていたい。たとえそれが血のつながりじゃなくても」

家族って、完璧じゃないし、時には不器用で、間違うこともある。
それでも、誰かと一緒に生きようとすること。それ自体がすごく人間らしくて、愛おしいなって思いました。

 

 ストーリー      ★★★★★

(生々しさがリアル)

    キャラクター    ★★★★★

(どこまでが台本なんだろうという不思議な感覚)

  心に刺さる度   ★★★★☆

(幸せの形って一体何か。他人が関与するべきなのか)

    泣ける度     ★★★★★

(後半かけて怒涛の号泣ラッシュ)

    総評       ★★★★☆

(是枝監督の真骨頂)

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