『バケモノの子』エモくて泣きそうだった話。
かなり前に見た『バケモノの子』。もう一度見たくて。
細田守監督の作品って、なんだかんだ毎回観ちゃいます。『時をかける少女』も『サマーウォーズ』も『おおかみこどもの雨と雪』も好きで、あの独特の絵柄と、なんかこう…説明しにくいんだけど“懐かしさ”みたいなのがある世界観。今回の『バケモノの子』も、その系譜にしっかり乗っかってました。
ざっくりあらすじ
舞台は渋谷とバケモノの世界「渋天街」。主人公は、母親を亡くして心に大きな穴が空いた9歳の少年・蓮(後の「九太」)。家出して渋谷をさまよってたら、ひょんなことからバケモノの世界に迷い込んで、そこで暴れん坊の熊徹(くまてつ)に拾われる。
熊徹は、次期「宗師(そうし)」っていう偉いポジションを目指してるけど、性格はめちゃくちゃ不器用で粗暴。でも情に厚い。そんな彼が、なんだかんだ九太を弟子にして、一緒に成長していく…っていう、ザ・師弟もの。
とにかく序盤が熱い
最初の30分くらいはめっちゃテンポ良いです。渋谷のリアルな街並みから、いきなり異世界に飛ばされる展開とか、ワクワク感がすごい。(今流行りの転生物のよう)
細田監督の背景美術ってやっぱ好き。渋谷のゴチャゴチャした感じも、バケモノの街の色鮮やかさも、観てて「あ〜映画館で観たかった…」ってなる。(ちなみに僕は今回DVDで観ました)
あと熊徹のキャラが良い。めちゃくちゃ口悪いし暴力的だけど、どこか憎めない。九太も最初は反抗的で、ふたりのケンカが小学生男子の口ゲンカみたいで微笑ましい。これぞ少年漫画的な王道展開。
中盤から急に青春映画になる件
でも、中盤以降。九太が成長して17歳になってから、一気に空気が変わる。
ここで急に渋谷に戻るんですよ。
高校生になった九太が、普通の世界で普通の高校生活を始める。で、ここでヒロイン枠の少女・楓ちゃん登場。
最初は読書好きのちょっと変わった子なのかな〜って思ってたけど、めちゃくちゃ良い子でした。
特に、九太が字の読み書きができないコンプレックスを抱えてるところに、楓が寄り添って勉強を教えるシーン。あそこ、なんかもう…胸がキュッてなる。九太が初めて人とのつながりに向き合う姿に、こっちもグッときました。
ただ、正直このあたりから「え、これってもうバケモノ関係なくない?」っていう感覚もちょっとあった(笑)
ラスボスがちょっと唐突問題
で、終盤。いきなり登場するラスボス・一郎彦(いちろうひこ)。
彼も最初は、九太と同じように熊徹のライバル・猪王山(いおうぜん)の弟子として育った少年だったんだけど、だんだん心に闇を抱えていって…。最後には完全にダークサイド落ち。しかも、その闇が“人間の心の穴”っていう、わりとメンタル面の比喩で描かれるんだけど、これがまた賛否分かれそうな展開。
個人的には「もうちょい丁寧に描いて欲しかった…」っていう気持ちもある。唐突感は否めない。ていうか、なんなら終盤のバトルシーン、急に超能力バトルみたいになるし。
九太が渋谷のど真ん中で剣振り回すシーンとか、冷静に考えるとめっちゃシュール。でも、感情的には「行け!九太!」ってなる。不思議(笑)
熊徹のラストが泣ける
そして、個人的に一番泣きそうになったのが、熊徹との別れのシーン。
ここでまさかの展開。「熊徹が九太の心の中で生き続ける」っていうあの演出、ずるいでしょ…。声が聞こえるくだりとか、ほんと涙腺にくる。思い返すだけでちょっとウルっとする。
師弟ものってさ、最終的に「親離れ・子離れ」みたいなテーマになるじゃないですか。この作品もまさにそれ。熊徹の不器用だけど深い愛情、そしてそれを受け止めて自立していく九太。しっかり成長物語として完結してて、ラストの爽やかさもすごく良かった。
全体的な感想まとめ
良かったところ:
- 序盤のテンポ感と世界観のワクワク感
- 熊徹と九太の掛け合い
- 渋谷のリアルな描写と、バケモノ世界の色彩感
- 熊徹との別れシーンの感動
- 惜しかったところ:終盤の展開がやや駆け足
ラスボス感が弱い
一郎彦の闇落ちがちょっと唐突
バケモノの世界の掘り下げがもう少し欲しかった
総評としては、「文句もあるけど、最後にはしっかり泣かせに来る映画」って感じ。細田守作品の中では『サマーウォーズ』とか『おおかみこども』に比べるとストーリーのまとまりに少し雑さはあるけど、それでもちゃんと胸に残るものがある。
観終わったあとに「親って大事だな…」「育ててくれた人ってありがたいな…」って、しみじみ思える作品でした。
もしまだ観てない人がいたら、ぜひ観てほしい。そしてできれば、心がちょっと疲れてるときに観るのがオススメです。なんだかんだで、あったかい気持ちになれます。
ストーリー ★★★☆☆
(ちょっと、ん?ってなるところも)
キャラクター ★★★★★
(九太と熊轍、他のキャラも味があっていい)
心に刺さる度 ★★★★☆
(異種族の愛)
泣ける度 ★★★☆☆
(ちょっと泣けてじ~んとします。)
総評 ★★★★☆
(おおかみこどもの雨と雪よりはちょっと、、、)