らふたぁの映画館

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映画『望み』


   映画『望み』は、雫井脩介の同名小説を原作とするヒューマンサスペンスであり、家族の「信じたい気持ち」と「恐れる気持ち」が交錯する緊張感あふれる作品だ。

 

 監督は『イニシエーション・ラブ』『十二人の死にたい子どもたち』などで独特のサスペンス演出を手掛けてきた堤幸彦。そして主演には、堤真一石田ゆり子岡田健史清原果耶という豪華キャストが揃い、観る者を心理的に揺さぶる演技を見せてくれる。

 

 映画を観終わった後、私はしばらく席から立てなかった。ストーリーの結末が衝撃的だったからではない。この映画が描く「家族の崩壊と再生」「世間の目」「信じることの苦しみ」といったテーマが、あまりにもリアルで、現実に置き換えたときの重みを痛感したからです。

 

 今回は、映画『望み』について、ストーリーの魅力やキャストの演技、そして何より「望む」ということの意味について深掘りしていきたい。


息子は被害者か?加害者か?衝撃のストーリー

 物語は、建築家として成功し、幸せな家庭を築いていた石川一登堤真一)とその妻・貴代美石田ゆり子)のもとに、長男・規士岡田健史)が帰宅しないという一報が入ることから始まる。

 

 最初は単なる外泊かと思っていたが、同じ高校の生徒が殺害される事件が発生し、一登の友人が彼の関与をほのめかす証言をする。

 

 息子は被害者なのか? それとも加害者なのか?

 警察の捜査が進むにつれ、と貴代美の心は揺れ動く。母は「生きていてほしい」と願うが、父は「殺人犯であるく一登らいなら、亡くなっていたほうがマシ」とまで考えてしまう。そこには、「加害者の家族」として世間に晒されることへの恐怖があった。

 

 この究極の選択を前に、家族は次第にバラバラになり、それぞれの「望み」が交錯していく。

 

 息詰まる心理描写!キャストの圧倒的な演技
 この映画の最大の魅力は、家族のリアルな心理描写だ。

 

 まず、堤真一演じる一登は、「父親」というより「社会的な立場のある大人」として振る舞おうとする。しかし、事件が進むにつれて冷静さを失い、揺れ動く姿が痛々しいほどリアルだ。

 

 彼は会社を経営する立場であり、世間の目を気にしながらも、「息子を信じたい」という父親の本能と、「もし加害者だったら?」という恐怖の間で揺れ続ける。

 

 一方、石田ゆり子演じる貴代美の心理描写はさらに凄まじい。最初は「息子を信じる母親」として強い姿勢を見せるが、メディア報道や世間の噂が加速するにつれ、「息子が犯人だったらどうしよう」と疑いを持ち始める。その不安が爆発するシーンでは、石田ゆり子の演技が光る。泣き崩れながらも「望み」という言葉を口にする姿に、観客の心も締め付けられることだろう。

 

 また、清原果耶演じる妹・雅も重要な役割を果たす。彼女は高校受験を控えているが、兄の事件が学校中の噂になり、友達との関係にも亀裂が入る。彼女の視点から描かれる「普通の生活を望む気持ち」と「家族への疑問」は、多くの観客に共感を与えるだろう。

 

 
「世間の正義」に晒される家族の恐怖
 この映画では、事件の真相よりも、「事件が起きたことで家族がどのように変わっていくか」が描かれる。特に、報道の過熱ぶりや、ネット上での憶測がリアルすぎて怖い。

 

 ニュース番組では、「未成年の事件」ということで名前は伏せられているが、ネット上ではすでに「石川一登が犯人だ」と決めつけられ、住所や家族構成まで拡散されていく。SNSでは「被害者家族がかわいそう」「加害者の家族も同罪だ」といったコメントが飛び交い、家族は世間の目に怯えながら暮らさざるを得なくなる。

 

 そして、一番残酷なのは「世間は真実よりも噂を信じる」ということだ。警察が正式な発表をする前から、人々は一登を犯人扱いし、その家族を攻撃する。「もし自分がこの立場になったら?」と考えると、鳥肌が立つような恐怖を覚えた。

 

 「望み」とは何か?観客に突きつけられる問い
この映画のタイトルである「望み」。父、母、妹、それぞれが異なる「望み」を持つが、観客もまた「自分だったら何を望むか?」を考えさせられる。

 

 母の望み:「息子が生きていてほしい」
 父の望み:「息子が殺人犯でないことを証明したい」
 妹の望み:「家族が普通の生活に戻れること」

 

 しかし、この映画が突きつけるのは、「望むことはできるが、現実は変わらない」という残酷な事実だ。どれだけ信じても、どれだけ願っても、事実は一つしかない。そして、その事実をどう受け入れるかが、家族にとって最大の試練となる。

 

 ラストシーンは静かだが、深く心に残る。答えが出ても、家族の苦しみは終わらない。それでも彼らは生きていく。その姿が、観る者に「それでもあなたは望みを持てますか?」と問いかけているように思えた。

 

 まとめ:心に刺さるヒューマンサスペンス

 『望み』は、単なるサスペンスではなく、「家族の絆」「世間の目」「信じることの難しさ」をリアルに描いた心理ドラマだ。豪華キャストの名演技、緊迫感あふれるストーリー、そして考えさせられるテーマが、観客の心を深くえぐる。

「もし自分の家族が同じ立場になったら?」――この映画は、そんな問いを投げかけてくる。そして、答えは決して簡単には出せない。だが、それでも人は「望むこと」をやめられないのだ。

考えさせられる映画が好きな人には、ぜひおすすめしたい一本である。

 

 どちらも結末でも消して家族にしあわせは訪れない。

 

 皆さならこの作品を見たあと何を思いますか?

 

 

ストーリー  ★★★★★

(現実味のある生々しさ)

    キャラクター ★★★★☆

(みんな演技がうまい。岡田健史は発展途上)

    泣ける度   ★★★☆☆

(母の愛が凄い)

    おすすめ度  ★★★★★

(誰にも起こるかもしれない)

    総評     ★★★★☆

(本当に考えさせられます)