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映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』

 『母さんがどんなに僕を嫌いでも』感想

    映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(2018年)は、実話をもとにした衝撃的な物語でありながら、同時に人間の強さや希望を描いた感動作です。

 

 吉田羊演じる母親の光子の壮絶な虐待、太賀現:仲野太賀)演じるタイジの苦悩と再生、そして彼を支える友人たちの温かさ――そのすべてが観る者の心を揺さぶります。タイトルからして強烈なこの映画は、単なる家族ドラマではなく、虐待という社会問題をリアルに描きつつ、人が人をどう愛するか、許しとは何かを問いかけてくる作品です。

 

1. 衝撃的なタイトルと現実の重さ
 まず、この映画のタイトル『母さんがどんなに僕を嫌いでも』が持つインパクトについて考えたい。母親が子どもを嫌う――そんなことがあっていいのか? そう思うのが普通の反応だろう。しかし、この物語の主人公・タイジにとって、それは紛れもない現実だった。

 

 実際にタイジは幼少期から母親にひどく虐げられ、心も体も深く傷つけられて育った。

 母親が息子を拒絶するという構図は、フィクションであれば「極端な設定」として受け止められるかもしれないが、本作は実話を基にしている。つまり、これは現実にあったことであり、日本社会において決して珍しくない問題なのだ。

 

 虐待のニュースが後を絶たない昨今、この映画が持つ意味はますます大きくなっている。

 

2. 仲野太賀の圧倒的な演技
 この映画を語る上で欠かせないのが、主人公・タイジを演じた仲野太賀の存在感だ。彼は、幼少期に受けた虐待のトラウマを抱えながら、それでも「母に愛されたい」と願い続ける複雑な心情を見事に表現している。

 

 特に、母との距離をどう取るべきか葛藤するシーンでは、その表情の一つひとつに感情が込められていて、観る側も心を締め付けられるような気持ちになる。

 

 虐待を受けた子どもが「親を憎みきれない」という心理は、多くの虐待サバイバーが経験するものであり、そのリアルな描写が観る者の胸に深く突き刺さる。

 

 また、タイジが周囲の人々と出会いながら少しずつ成長していく過程も感動的だ。彼は決して「虐待を乗り越えた強い人間」として描かれるのではなく、苦しみながらも自分なりに前に進もうとする。その姿に、多くの人が共感を覚えるのではないだろうか。

3. 母親という存在の複雑さ
 吉田羊が演じた母親は、単なる「悪役」ではなく、非常にリアルな人物として描かれている。彼女は間違いなく息子に対してひどい仕打ちをしてきたが、それでも彼女自身の背景や心の闇が示唆されることで、一方的に憎むことができないような存在になっている。

 

 虐待をする親は必ずしも「悪意」を持っているわけではない。育児のストレス、過去のトラウマ、精神的な問題など、さまざまな要因が絡み合って虐待が生まれることが多い。本作では、そうした現実が浮き彫りにされる。

 

 特に印象的なのは、母親が息子を突き放しながらも完全に無関心ではいられない様子を見せる瞬間だ。「愛したいけど愛せない」「近づきたいけど近づけない」――そんな彼女の葛藤がにじみ出る場面では、ただの「悪い母親」として彼女を見ることができなくなる。

4. 友情の力
 本作のもう一つの大きなテーマは「友情」だ。タイジは友人たちの支えによって少しずつ自分を取り戻していく。その過程が温かく、希望を感じさせるものになっている。

 

 虐待を受けた人間にとって、家族以外の人とのつながりがいかに大切かをこの映画は教えてくれる。血のつながりがすべてではなく、人は他者との関係の中で救われることもあるのだ。特に、タイジを支える友人たちのセリフや行動には、胸を打たれる場面が多い。

 

 「お前は悪くない」この言葉がどれほどの救いになるか、虐待を経験した人なら痛いほどわかるはずだ。親から否定され続けたタイジにとって、自分を肯定してくれる存在は何よりの救いだった。

5. 許しとは何か?
 映画のクライマックスでは、タイジが母と再び向き合うシーンが描かれる。このシーンは観る人によって感じ方が違うかもしれない。虐待を受けた人の中には「親を許せるはずがない」と思う人もいるだろうし、「それでも親を求めてしまう」という気持ちに共感する人もいるだろう。

 この映画が素晴らしいのは、「許し」を押し付けないところだ。タイジがどのような選択をするのかは映画を観てのお楽しみだが、その選択が絶対的な正解ではないことがわかるように描かれている。虐待を受けた人それぞれに、自分なりの向き合い方があるのだと感じさせてくれる。

 

6. まとめ

 『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は、決して軽い気持ちで観ることができる映画ではない。しかし、虐待というテーマを真正面から描きながらも、ただ悲惨なだけで終わらせず、そこに人間の強さや希望を見出そうとする作品だ。

 

 仲野太賀の圧倒的な演技、母親という存在の複雑さ、友情の温かさ、そして「許し」というテーマ――どれをとっても深く考えさせられる映画だった。

 

 この作品は、虐待を経験した人にとっては辛い部分もあるかもしれないが、それ以上に「一人じゃない」「人生は変えられる」と思わせてくれる力を持っている。観る人それぞれの心に何かしらのメッセージを残す、そんな映画だった。

 

 ストーリー  ★★★★☆

(虐待の描写が生々しい)

    キャラクター ★★★★☆

(吉田羊と仲野太賀の組み合わせがいい)

    泣ける度   ★★★☆☆

(後半にかけての展開が泣けます)

    おすすめ度  ★★★★☆

(虐待の経験がある人にはしんどいかも)

    総評     ★★★★☆

(一度見て考えてほしい)

 

 なんか、重いのばっかり記事にしてるなあ。恋愛とかファンタジーもちゃんと好きなのでサイコパスって思われてなければいいけど(笑)