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映画『死刑に至る病』

『死刑に至る病』圧倒的狂気と心理戦に震えるサイコ・ミステリー

 

   映画『死刑に至る病』は、心理的な恐怖と謎が絡み合う異色のサスペンス映画だ。原作は櫛木理宇の同名小説。主演の阿部サダヲ水上恒司(旧:岡田健史)の演技が光り、観る者を不安と緊張の渦へ引きずり込む。観終わった後の感覚はまるで、深い闇の底へ沈んでいくような不快感と、それでいて妙にクセになる感覚の両方が入り混じっていた。

 

 結論から言うと、この映画は「単なる連続殺人事件の話」ではない。観る者の精神にじわじわと染み込む“心理の罠”が最大の魅力であり、決して単純なホラーやスリラーに分類できる作品ではない。


 1. ストーリーの概要:狡猾な殺人鬼と青年の“歪な対話”
 映画は、24人もの高校生を殺害し、死刑判決を受けた榛村大和阿部サダヲ)**が、ある日 突然、平凡な大学生・筧井雅也(水上恒司)に手紙を送るところから始まる。

 手紙の内容は、「私が殺したとされる24件の事件のうち、1件だけ冤罪だ。それを調べてほしい」というもの。

 

 ここで観客は「なぜ榛村はこの青年を選んだのか?」という疑問を抱く。そして、その疑問が解明されるまでのプロセスが、この映画の最大の見どころとなる。

 

 物語が進むにつれ、雅也は榛村に翻弄されていく。彼の家族、過去、精神状態、すべてが榛村によって暴かれ、歪められ、少しずつ崩壊していく様が描かれる。


2. 阿部サダヲの怪演がヤバすぎる
 榛村大和を演じる阿部サダヲの演技は圧巻だ。普段のコミカルなイメージとは一線を画す、冷静で知的、それでいてどこか人間味を感じさせる“カリスマ的な殺人鬼”を完璧に演じ切っている。

 

 彼の言葉には一見すると説得力があり、恐ろしいほどに魅力的だ。

この榛村という男、普通の殺人鬼とは違う。「殺すことが目的」ではなく、人間の心を操作することに快楽を覚えているのだ。そこがこの映画の怖さの本質だろう。


3. 水上恒司演じる雅也の“変化”
 最初はただの普通の青年だった雅也が、榛村とのやり取りを通じてどんどん変貌していく。彼の目つき、声のトーン、行動……すべてが少しずつ狂気に染まっていく様が恐ろしい。

 

 彼は自分が真相に近づいていると信じているが、実は榛村の手のひらの上で踊らされているだけかもしれない。その「誰が操られているのか分からない」感覚が、映画のサスペンス性を極限まで高めている。


4. 「人はなぜ狂気に魅了されるのか?」

 この映画を観ながら感じたのは、人間の中にある“歪んだ好奇心”を刺激する物語だということ。

 

 なぜ人は、猟奇的な事件に興味を持つのか?
なぜ、絶対に関わりたくないはずの犯罪者の言葉に耳を傾けてしまうのか?

 

 榛村はまさにその「人間の弱さ」を利用する存在だ。彼は直接暴力を振るうわけではない。言葉と巧みな話術で相手の心を支配する。

 

 この映画を観ることで、「自分もまた、榛村のような狂気に魅せられているのではないか?」という恐怖が生まれる。この心理的な揺さぶりこそが、『死刑に至る病』の真の恐ろしさだろう。


5. 演出と映像の“生々しさ”
 監督の白石和彌は、これまで『凶悪』や『孤狼の血』などでリアルな暴力描写や犯罪心理を描いてきた名手。本作でも、その手腕が存分に発揮されている。

 

 特に印象的だったのは、画面全体にじわじわと滲み出る不穏な空気感。
榛村と雅也の会話シーンでは、カメラワークが微妙に揺れ、不安定な雰囲気を演出する。

 また、雅也の精神が追い詰められていくにつれ、映像もどんどん歪んでいく。こうした演出が、観客に対しても無意識の不安を植え付けるのだ。


6. ラストの衝撃:「お前はもう逃れられない」
 そして、何と言ってもこの映画のラストは衝撃的だった。ネタバレは避けるが、一つ言えることは、**「真実を知ることが必ずしも救いにはならない」**ということ。

 

 雅也は事件の真相にたどり着いたのか?榛村の狙いは何だったのか?
最後に雅也が見せた表情がすべてを物語っている。

 

 鑑賞後、「自分がもし雅也の立場だったら…?」と考えるとゾッとする。そして、何か得体の知れない不安が心の奥に残る。


7. まとめ:異質なサスペンス映画の傑作

 『死刑に至る病』は、ただの猟奇事件を扱った映画ではなく、「人間の心の闇」を鋭くえぐる心理サスペンスの傑作だ。

 

 阿部サダヲの怪演、水上恒司の変貌、そして監督・白石和彌の緻密な演出が組み合わさり、観る者を深い闇へ引きずり込む。

 

 観終わった後、ただの「怖い映画」ではなく、どこか奇妙な感覚が残る。
それこそが、この映画の持つ本当の恐ろしさだろう。

 

 まさに、「観たら戻れない」映画。
この狂気に魅了される覚悟があるなら、ぜひ一度、この映画を体験してみてほしい。

 

 最後に一つ重要なことを言います。

 

 僕はもうこの映画を一生見ることはありません

 それは・・・

 

 拷問シーンがエグ過ぎます。とにかく生々しい。拘束した上で爪を剥ぎ、目玉をくりぬき、逃げても必ず捕まえて拷問した上で殺害します。僕は冗談抜きで一週間悪夢にうなされました。しかしなぜそんなものをお勧めするかというと、とにかくストーリーが面白かった。

 

 エグい映画がお好きな方は是非一度見てみてください。そして苦手な方は絶対に見ないでください。一生のトラウマになることは間違いありません。もう一度言います。僕はもう一生見ません(笑

 

 あと、この映画で水上恒司の演技力が飛躍的にうまくなったと感じました。そこも見どころかな?

 

ストーリー  ★★★★☆

(怖いだけじゃない)

    キャラクター ★★★★★

(阿部サダヲの意外な役)

    泣ける度   ★☆☆☆☆

(泣けるわけがない 笑)

    おすすめ度  ★★★☆☆

(サイコパス向け)

    総評     ★★★☆☆

(確実にトラウマになります)

 

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